禅の智慧とは?

禅の智慧とは、どういうものでしょうか?

これを学ぶには、体験と継続が重要です。
頭で理解するのではなく、体感するということです。
でも、一言で言うと「自然との一体感」といったところでしょう。
「自然との一体感」とは何か?

ブッダの教えの基本の一つに「因果」があります。
すべての事象・物事は、様々な物(生き物・物質・世界・宇宙)が要因となって、その結果として存在している、様々な物事が関係しているという考え方、見方です。

あなたが、今、ここに存在しているのも、様々な事象の結果です。

先日、当寺院で葬儀をされた労祖からの法話で、「昔の話ですが、「わしは、誰の世話にもなっていない。わしは、わしの力で生きているんだ」と豪語している高齢者がいた。とんでもない。まったくの見当違い。あなたが食べている、その食べ物はどこからきたのか。農作物、肉魚、すべて、誰かが、それを育て、取ってきた物であろう。また、野菜や果物、魚、肉を食するということは、その生命をいただいているのだ。それでも誰の世話にもなっていないというのか?」

いま、コロナウィルスが蔓延し、その感染に恐れて、医療従事者やその家族を敬遠したり、店舗での感染を恐れて、通販を使うが、宅配業者から感染するのではと恐怖し、宅配してくれる方を差別をしたり。もし、彼らがいなければ、あなたの健康を守り、便利な生活を営めますか?

コロナウィルス拡散前からも、「幼稚園の児童の声がうるさい」だとか、お寺の除夜の鐘がうるさいだとか。幼稚園の児童も、将来を担う大切な子供たちです。お寺の鐘がうるさいというのも、おそらく、お寺のほうが先に、その場所にあって、後から、その周囲に引っ越しされているはず。こういうことが、「うるさい」と感じるのは、「誰の世話にもなっていない」と言った人と同じで、メンタル的に病んでいる状態となっています。

様々な事象が関係して、今、あなたがはここに存在しているのです。医療従事者も、宅配業者も、そして子供も存在していないと、あなたは、多分、困る状況になるでしょう。

「因果」という物の見方をよく自問自答してみましょう。そして、自分、周囲、自然、環境をよく観察し、洞察してみましょう。様々な困難も、禅の智慧があれば、冷静に困難を乗り越えることができるでしょう。

禅の智慧は、まず観察から始まります。自分自身、周囲の人・物、自然。精神統一し、呼吸を整え、姿勢を正して、これらをよく観察すれば、すべての事象・物事が、自分とどう関わり合っているか見えるようになります。その結果、様々な物事に対して、感謝の気持ちが出てくるはずです。自然を含め、すべての事象は、自分の存在を助けてくれています。

頭で理解するのではなく、体全体の感覚を研ぎ澄ませて、よく観察して感じましょう。目に見えることだけで、物事を理解したつもりになってはいけません。インターネットやテレビで見たり聞いたりした情報だけで、わかったつもりになってはいけません。呼吸と姿勢を正し、自分の脳と体を研ぎ澄ませて、よく観察・洞察してみましょう。よく観察し洞察すれば、嘘ではない本当の形が見えてきます。謙虚な姿勢が生まれます。すると不思議、些細なことでイライラすることが減っていきます。

禅の究極の姿は、自然との一体感にあります。今日は、雨が降っています。雨の音を観察してみましょう。なんとも良い響きです。