素粒子の世界と仏教

最先端の物理学である素粒子論では、素粒子は計算上10次元程度の世界にまで展開していることがわかってきた。次元とは、その空間を構成する要素である。我々の世界は縦・横・高さの3次元である。

素粒子の振る舞いは、我々の住む3次元空間で観測すると非常に奇妙な振る舞いをする。
その1つは、

素粒子は観測されるまでは波の性質を持ち、観測されると粒子になるという粒子の二重性

人間が見ていないときは、素粒子は波のように広がっており、人間に見られると粒になるという、なんとも奇妙な性質を持っている。3次元世界はすべて素粒子で構成されているので、我々が見ている物や物質は、我々が見ていないときには、波動になっているということなのだ。一体、我々は何を見ているのだろうか。

もうひとつは、直近の実験で得られた事象なのだが、二重スリット実験で奇妙な現象がある。例として、素粒子の1つである電子を飛ばして2つのスリットを通過させる実験で、人間が観測していないときは、ひとつの電子が波のように2つのスリットを同時に通り抜けるが、人間が観測していると粒子となり、2つのスリットのうち、片方だけを通過する。人間が見ているときと見ていないときで電子の振る舞いが変わるのだ。

さらに奇妙なことに、二重スリットの横に人間を座らせ、手前のスリットを通るように念じると、手前のスリットを通過する確率が増えてくるという実験結果。人間の念(意識)が電子の振る舞いに影響を与えるのだ。

素粒子が人に見られていたり、人が念じることで振る舞いを変えるという、なんとも奇妙な実験結果なのである。

現代は半導体という技術のおかげで、生活が豊かになってきた。半導体の技術は、固体中で電子をいかに制御するかという技術なのだが、素粒子の中でも電子については、人工的に、かなり制御ができるようになってきたし、様々な知見が得られている。

電子の状態(位置と運動量(移動速度))をあらわすシュレーディンガーの波動方程式がある。この方程式の中には、虚数(Imaginary Number)が出てくる。実数(我々の3次元世界に存在する数)に対して、虚数は、3次元世界には存在しえない数である。つまり、虚数で表現されるということは、電子(素粒子)は3次元を超えた高次元にまで存在していることを示しているのだ。

さて、話しは変わって、お釈迦様が説かれた有名なお経に「般若心経」がある。般若心経には、我々は住んでいる世界がどうなっているかが書かれている。我々の3次元世界は「空相(くうそう)」すなわち「空(くう)」の一部である。空というのは3次元を超えた高次元空間のことである。「色即是空」「空即是色」と書かれているように、我々の世界(空相)は、高次元空間「空」の一部であり、我々の肉体や魂をあらわす「色(しき)」は、空と空相を行ったり来たりすると書かれているのだ。この話もなんとも奇妙な話しだ。

素粒子は3次元空間を超えた高次元空間にまで存在しているが、人間の念や意識が素粒子の振る舞いに影響を与えるということは、人間の念や意識も、高次元空間まで影響を与えているということでもある。3次元空間では素粒子の振る舞いが奇妙に思えるが、高次元空間から3次元空間を眺めていれば、おそらく奇妙でもなんでもないのだろうと想像できる。

3次元空間に存在する人間の五感では、縦・横・高さの3次元の空間しか認知することができないが、高次元空間は明らかに存在しており、人によっては、高次元空間からのシグナルを感じることができる人がいるようだ。我々が日常、奇妙な現象を経験することが稀にあるが、それらは、高次元空間からのシグナルを感じたということではないかと思われる。そもそも、人間の五感というのは、3次元世界の中の狭い範囲しか感じることができないのだ。にもかかわらず、人間の五感で感じ得ないからといって、そこには何もないというのは人間の傲慢である。見えていない事象のほうが明らかに多いのだ。そもそも3次元しか存在しないと考えるほうが不自然であろう。

壁で囲まれると、外へ出れないと思っているのは3次元しか認知できないからであり、高次元の世界から見れば、壁があっても通り抜けることができるはずだ。電子にトンネル効果があるように。

いわゆる神仏の世界や霊界、あの世と呼ばれる世界について、3次元を超えた高次元の世界として捉えれば、様々な事象がすっきりと理解できようというものだ。そして、人間の念や意識が高次元の世界に作用し、また高次元の世界からのシグナルを3次元世界の人間も感じることができるということでもあり、一心に念仏を唱えることは、高次元空間にシグナルを送るということにもつながるはずだ。

人間の念や意識の中でも、特に高次元の世界と繋がりやすい念や意識は「愛情」であると、住職の経験から申し上げておこう。「慈愛」をそそぐ行為は、すなわち、高次元の世界と繋がるための訓練なのである。