法話6:イライラを抑え、幸福になる方法

マインドフルネス講座の数を重ねるうちに、「日々の不満やイライラを抑え、幸福になるための方法」が、より見えるようになりました。

日常生活、社会生活を送る上で、人間という生き物は、様々な困難、不満、イライラに直面するのが常です。誰しも、「穏やかに過ごしたい」、「イライラしたくない」、「幸せな日々を送りたい」と願っていますが、人生、なかなか自分が思うようには進まないものです。

「趣味」や「娯楽」を楽しんでいるとき、ほとんどの人は、満足感を得、幸せな時間を過ごせるはずです。旅行が好きな人は、旅行している時間は、幸せな時間を過ごしているはずです。ハワイには、住職は行ったことがありませんが、行った人にお話をお聞きすると、皆さん大満足のご様子。しかし、長期間、ずっとハワイに滞在できる人は少ないでしょう。
「趣味」はいいですね。自分の好きなことを、ずっと楽しんで実行できる。「楽しい」という感覚が脳を健全な状態に戻していきます。趣味から実益があれば、なおさらよいですが、趣味が実益を産まない場合は、仕事をして稼がないといけませんから、趣味だけを行うのは難しいです。

お金や財産は、人生を豊かにするアイテムの1つではあります。使え切れないくらいお金を持っている人は、今の社会では、いろんなことを成し遂げることができる。趣味も娯楽もやりたいほうだいできる。しかし、お金をたくさん持っている人が幸せか?というと、実は、そうでもないのです。その人の努力によってお金は集まってきたのですが、お金を集めるためには様々な人との関わり合いが必要で、人との関わりが多ければ、気苦労も多くなります。また、財をたくさん持っていることから、その管理にも労力と気苦労がかかります。さらに、財を持っていることで、妬みを買ったり、騙される、盗まれるといったことも発生してきます。

「人が抱える不満やストレスの要因には八つある」とブッダは分析しています。
それは四苦八苦です。

四苦とは、「生老病死」の4つの苦しみ
八苦とは、残り4つの苦しみで、
怨憎会苦(おんぞうえく):恨んだり、憎しんだりといった人間関係の苦しみ
愛別離苦(あいべつりく):愛する人との離別の苦しみ
求不得苦(ぐふとくく):欲しいものが手に入らないという苦しみ
五蘊盛苦(ごうんじょうく):五蘊(色(魂)・受・想・行・識(魂が行う活動))が盛えないという苦しみ

これは、今に始まったことではなく、人間が人間となってから、いつの時代も同じであったと思います。2000年前の人も、現代の人も、同じ悩み・苦しみを抱えているわけです。八苦を現代にああてはめると、「病」「人間関係」「金銭関係」がストレス・不満の大きな要因でしょう。

ここからが本題。
では、どうすれば「穏やかに」、「イライラせず」、「幸せな日々」を送れるのか?
キーワードは「観察」「感謝」そして「布施」の3つです。

【導入のきっかけとなるのは、姿勢と呼吸を整え、じっくり観察し、今の実状をよく観察し、よく看て(みて)、その中から良いことを探す、良い気づきを得るトレーニング】=マインドフルネスの実践にあります。

まずは、座禅・瞑想といった姿勢と呼吸を整える時間を、日々、作ることです。1日1回5分でもよい。背筋を伸ばし、深い呼吸を数回。この目的は、興奮している脳を鎮め、冷静な脳を作るためです。そして、冷静な脳で、自分や周囲の実状をよくよく看ることです。冷静な脳で、よく観察し、よく看ることができれば、その状態の中に、いままで見えなかった、よいポイントを見出す、認識することができるようになります。

人間という生き物は、自分に都合のよいように解釈しがちな生き物です。自分に都合の悪いことには腹が立ち、イライラします。法話5で、「人の品格とは何か?」を説明しましたが、人間はとかく自己中心に走りやすい生き物なのです。しかし、自己中心を実践していると、イライラは増すばかりの人生となります。

また、人間は、「普段、周囲の普通にあるものの良さに気がつかない」という性質があります。普段、普通にあるものが、どれだけ貴重で大切なものかに気づいていないのです。

例えば「空気」。空気が無くなるというような想像をしている人は、ほとんどいません。だから気がつかない。空気が、もし無くなったらどうなるのか、観察・洞察してみましょう。ブッダが説いた真理の1つは、永遠に続く物は何も無い(無常)ということです。空気もいつまでも有るものではないということです。

例えば「水」。日本では、蛇口を開けば、いつでも水が出ます。普段は、それが当たり前と思っているので、大震災で断水して、初めて「水」の有難さに「気づく」のです。さらに観察すると、「蛇口を開くと水が出るのは、なぜか?」と洞察していくと、ダムや水道管が整備され、それを保守管理している人がいるから、水が出るんだ!と気づくことができます。そのことに気づけば、水道設備とそれを保守している人に「感謝」の気持ちが出てきます。いま、コロナ禍の中ですから、「医療従事者」が活動してくれることで、命や経済が守られているということに「気づく」ということもありますね。

自分の身近にいる人でさえも、この世は「無常」ですから、いつか必ず別れが来る。そのことが、よくわかっていれば、お別れが来るまでの間、精一杯「感謝」して、その人との生活を楽しむことができます。自分の体も同様。普段普通にあるから、その有り難さに気がつかない。自分の体も「無常」ですから、いつか無くなる。または部分的に壊れて病となる。よくよく冷静な脳で観察していれば、人体は多数の細胞や臓器で構成されている有機体ですから、壊れる確率のほうが高い。壊れずに、何十年も維持されていることのほうが奇跡であることに気づくのです。まことに有難いことなのです。息を吸う。息を吐く。きれいな花を見ることができる。水を飲める。美味しいものも食べられる。流れる風を肌で感じることができる。生きるって良いことだなあと感じる。何十年も体が維持されている。なんと有難いことか。それに気がつけば、自分の体が無くなるまでの間、自分の体に感謝し、精一杯、大切にするようになるでしょう。

そして、最後のキーワード「布施」。自分以外の人・物に「施す」という行い。物を分け与えるということだけでなく、困った人を助ける、声をかけてあげるのも「布施」です。布施は「利他行」とも言います。相手は「人」だけではなく、「動物にも植物にも優しく接すること」も、そして「自然環境の保護」も利他行です。
よく観察し、善いことに気づくと、感謝の気持ちが湧いてきます。感謝の気持ちが湧くと、自然に「布施」「利他行」を実践するようになります。全く知らない他人であっても、観察・洞察を鋭くしていくと、何らかの形で関わっている可能性に気づきます。そして、布施・利他行を実践することで、自分の脳が癒されていくことにも気づきます。また自分を愛し、他人や動植物を愛することで、他人や他の物からも自分が愛されるようになります。これが好循環となって、さらに脳が癒され(冷静な脳が育成され)、正しい物の見方、考え方が身につくようになります。より安定した脳(思考)を得ることに繋がり、結果として「穏やかに過ごす」、「イライラしない」、「幸せな日々を送れる」ことに繋がっていきます。

イライラしたり、穏やかな生活を送れていない人は、呼吸と姿勢を整え、よく観察・洞察し、善いことに気づき、そして感謝し、感謝の気持ちを布施に転換してみてください。きっと、世の中の見え方が変わり、気持ち良い人生を送ることができますよ。